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【2026年Q3】ベトナム税務アップデート

【2026年Q3】ベトナム税務アップデート

2026年6月から7月にかけて、ベトナムでは個人所得税、税務管理、電子インボイス、移転価格税制など、企業実務に直結する分野で新規法令が相次いで公布・施行されました。本記事では、クロサワコンサルティングベトナム発行の税務アラート(2026年8月7日付)をもとに、主要な改正ポイントを整理してご紹介します。

1. 個人所得税

2026年7月1日、個人所得税法 第109/2025/QH15号が施行され、2007年個人所得税法(2012年、2014年、2020年改正)に代わる新たな基本法となりました。具体的な適用内容は、以下の政令・通達に規定されています。

政令第253/2026/NĐ-CP号(2026年6月30日公布、7月1日施行)

  • 家族控除額の引き上げ:本人は月1,550万ドン、扶養家族は月620万ドン
  • 医療費控除(年間最大2,300万ドン)及び教育費控除(年間最大2,400万ドン):合計年間最大4,700万ドン
  • 非課税範囲の拡大:食事手当(月120万ドン)、深夜勤務・残業・休暇時の賃金、退職手当が対象
  • 一時所得に対する10%源泉徴収の適用基準を、1回あたり200万ドンから500万ドンに引き上げ
  • 2か所からの所得が月1,500万ドン未満の個人の確定申告手続きを簡素化
  • 本政令は政令第65/2013/NĐ-CP号に代わるもの

通達第87/2026/TT-BTC号(2026年7月1日施行)

  • 扶養家族の所得基準を月100万ドンから月300万ドンに引き上げ
  • 扶養家族証明書類を対象者グループごとに詳細に規定(従来の一律様式を廃止)
  • 18歳以上でも行為能力を喪失した子、又は障害を有する子は引き続き扶養家族として認められる
  • デリバティブ証券取引に係る個人所得税の計算に関するガイダンスを制定

2. 税務管理

税務管理法 第108/2025/QH15号が2026年7月1日に施行され、2019年税務管理法に代わるとともに、政令第252号・第254号・第255号(いずれも2026/NĐ-CP)の法的根拠となっています。

政令第252/2026/NĐ-CP号(2026年6月30日公布、7月1日施行)

  • 税金滞納による一時的な出国停止の基準:個人事業主は滞納額5,000万ドン以上(かつ120日以上延滞)、法人代表者は滞納額5億ドン以上
  • 注意:外国籍および海外在住ベトナム人については、税金の滞納がある場合、最低滞納額の基準は適用されず、滞納の事実のみで一時的な出国停止の対象となる
  • 電子商取引(EC)プラットフォームは、販売者に代わり源泉徴収・申告・納税を行う義務を負う
  • 銀行は納税者の口座情報を税務当局に提供する義務を負う
  • 90日以上税金を滞納し自主的に納付しない納税者の情報は公表される
  • 本政令は政令第126/2020号、第91/2022号、第49/2025号、第117/2025号、第373/2025号に代わるもの

通達第89/2026/TT-BTC号(2026年7月1日施行)

  • 税務申告手続に関する主要ガイダンス。通達第80/2021号、第19/2021号、第46/2024号、第94/2025号、第21/2026号の全てに代わる
  • 外国契約者税の申告様式が刷新(税率の計算方法自体に変更はなし):新様式01/NTNN,NCCNN
  • 電子商取引プラットフォーム関連の新様式を追加(非居住者個人向け03/CNN-TMĐT、国外サプライヤー向け02/NCCNN・02-1/NCCNN、源泉徴収・代理納付用01/CNKD-NCCNN-TMĐT等)
  • 様式05/KK-TNCN:給与・賃金の支払者向けの新たな個人所得税申告書
  • 電子取引に関する内容を独立した章として分離し、附属書1に新様式合計125種類を規定
  • 2026年7月1日以前の課税期間に係る申告は、引き続き旧様式を使用

通達第90/2026号・第94/2026号(いずれも2026年7月1日施行)

  • 通達第90号:納税者登録の対象範囲を拡大し、国外サプライヤーが直接登録を行う必要がない条件を明確化
  • 通達第94号:電子インボイスの登録・利用の際にリスクが高い納税者を判定する5つの基準を規定

3. 電子インボイス

政令第254/2026/NĐ-CP号(2026年6月30日公布、7月1日施行)により、電子インボイス制度が大きく見直されました。

  • スーパーマーケット・ガソリンスタンド・映画館やカジノ、電子商取引の3分野の特例を除き、顧客情報が提供されない場合はインボイスに「一般消費者向け販売」と記載する必要があり、空欄は不可
  • インボイス未発行を通報した消費者への報奨制度を新設(罰金額の最大10%、1件あたり1,000万ドンを上限)
  • 2026年7月1日をもって税務当局発行の印刷インボイスを廃止
  • コードなし電子インボイス及びレジ連動発行インボイスの対象範囲を拡大
  • 本政令は政令第123/2020号、政令第41/2022号第1条、政令第70/2025号に代わるもの

あわせて施行された通達第91/2026/TT-BTC号では、電子インボイスの利用停止・一時停止となる11項目のケース、誤って作成された電子インボイスの処理に関する3項目のケース(様式01/BK-ĐCTT、04/SS-HĐĐT含む)、そして生体認証による利用登録手続きが新たに規定されています。

4. 移転価格税制(関連者間取引)

政令第255/2026/NĐ-CP号(2026年6月30日公布、2026年法人所得税課税期間から適用)により、移転価格税制にも重要な改正が加えられました。

  • 「機械、設備、資産等の貸借」が新たに関連関係の対象に追加(従来の貸付・借入のみから範囲拡大)
  • セーフハーバー(流通業5%以上、製造業10%以上、加工業15%以上)による移転価格文書化免除基準について、売上高2,000億ドンから5,000億ドンに引き上げ(機能・リスク要件等は従来通り)
  • 完全免除基準(売上高500億ドン未満、かつ関連者間取引額300億ドン未満)は変更なし
  • 国別報告書(CbCR)の提出基準を、固定額1兆8,000億ドンから7億5,000万ユーロ(為替レート換算)に変更
  • 本政令は政令第132/2020号及び政令第20/2025号に代わるもの

5. その他の改正

  • 政令第245/2026/NĐ-CP号(2026年6月27日公布):2026年分の付加価値税、法人所得税、個人所得税及び土地賃貸料の納付期限を延長
  • 通達第84/2026/TT-BTC号(2026年7月1日施行):外国籍又は海外在住ベトナム人がベトナム国内で購入し出国時に持ち出す物品に対する付加価値税還付制度を制定
  • 通達第86/2026/TT-BTC号(2026年7月1日施行):輸出入貨物に対する税務管理に関する規定を制定

まとめ

今回の一連の改正は、個人所得税の控除額引き上げといった納税者に有利な変更から、税務管理・電子インボイスにおける管理強化、移転価格税制における免除基準の引き上げまで、多岐にわたります。特に電子商取引プラットフォームや外国契約者、外国籍・海外在住ベトナム人に関する規定は実務への影響が大きいため、該当する企業・個人の方は早めの確認をおすすめします。

本記事は概要をまとめたものであり、実際の適用にあたっては必ず原文の法令をご確認ください。