更新: 2026年9月15日7分で読めます

通達第38/2026/TT-NHNN号:外国投資に係る外国為替管理の変更

通達第38/2026/TT-NHNN号:外国投資に係る外国為替管理の変更

2026年7月31日、ベトナム中央銀行は、ベトナムへの外国投資活動に係る外国為替管理に関する通達第38/2026/TT-NHNN号(以下「本通達」)を公布し、2026年8月18日より施行されました。本通達は、2025年投資法及び新たな投資実務に適合するよう外為政策を更新し、外国投資家にとってより有利な投資環境を整備することを目的としています。本通達は、通達第06/2019/TT-NHNN号に代わるものであり、通達第03/2025/TT-NHNN号の一部は廃止されました。これによって、外国為替管理の適用範囲が拡大し、投資資本口座制度が標準化されて、ベトナムへの外国投資資金の流入に係る法的枠組みが整備されました。

重要なポイント

  • 用語の統一及び適用範囲の拡大:「在ベトナム外国投資資本口座(以下「投資資本口座」)」に名称が統一され、国際金融センターからの投資資金フローにも適用。
  • 出資及び投資準備段階における柔軟性の向上: 投資登録証明書(IRC)の取得前であっても投資資本口座の開設容認。取引承認後であれば、直ちにM&A取引に係る送金を許可。
  • M&A取引代金決済の円滑化と資金滞留の防止: 投資家は、取引承認(M&A Approval)がある場合、承認取得後直ちに、企業登録の変更申請前であっても出資金及びM&A代金の送金が可能。銀行で資金が留め置かれる(ペンディング)事態を回避し、適時な資金処理を確保。
  • 再投資の円滑化:ベトナム国内で得た利益を事前に海外へ送金することなく、直接国内での再投資に充当することを許可。

本通達38における新規・変更・更新事項の概要は、以下の通りです。

用語の更新及び適用範囲の拡大

投資資本口座に関する用語の標準化

「直接投資資本口座/外国直接投資資本口座」という名称は、すべて「在ベトナム外国投資資本口座」に改称されます。本口座は、ベトナムへの外国投資活動に係る収入・支出取引に使用されるだけでなく、ベトナムの国際金融センターからベトナム国内のその他の地域への投資活動にも適用されます。

適用対象となる主体の範囲拡大及び再定義

本通達は、2025年投資法との整合性を図るため、「外資系企業」という用語を「外資系経済組織」という概念に変更しました。同時に、国際金融センターの会員企業、石油・ガス請負業者及び石油・ガスのオペレーターという新たな主体の類型を追加し、現在の投資取引の特殊性を反映するとともに、従来規制されていなかった分野にも外国為替管理の適用範囲を拡大しています。

特殊な対象グループの追加

本通達は、適用対象となる主体の範囲も拡大し、従来の通達第06/2019/TT-NHNN号では対象外だった特定のグループを追加しました。外資系経済組織及び外国投資家に加え、本通達は次の主体を新たに認めています。

  • 国際金融センターの会員企業
  • 石油・ガス契約における請負業者
  • 石油・ガス契約におけるオペレーター

上記の主体は、投資資本口座の開設・利用及び外国為替取引の実施に関する権利及び義務を有します。この追加により、法的枠組みは新たな投資モデルをより十分に包括し、石油・ガス分野及び国際金融センターの特殊性を的確に反映する運用が可能となります。

投資登録証明書(IRC)取得前における投資資本口座の開設

2025年投資法では、投資家がIRCの発給又は修正前に経済組織を設立することを認める新たな法的枠組みが構築されました。これに伴い、プロジェクトの準備段階から資金の流れを処理するための制度設計が必要となりました。本通達は、外資系経済組織がIRC取得前に外貨又はベトナムドンによる投資資本口座を1口座開設することを認めています。ただし、当該口座の使途は以下の目的にのみ使用できます。

  • 投資家からの出資金の受領
  • 口座残高から生じる利息の受領
  • ベトナムでの投資準備に係る適法な費用の支払
  • IRCが発給(又は修正)されない場合、投資家又は会員企業への出資金の返還

IRCが発給された後、企業は他の外貨の口座を追加で開設し、外国為替管理に関する規定に準拠したあらゆる収支取引を行うために投資資本口座を全面的に使用することが可能となります。

M&A(合併・買収)取引における出資、増資及び譲渡代金の決済

従来の通達第06/2019/TT-NHNN号の大きな問題点は、企業が国家機関への登録手続を完了していない段階において、国内外の投資家がM&A取引において出資、増資又は取引代金の決済を行うことが可能な時期が明確に定められていなかったことです。実務上、投資家が送金を行う際、一部の商業銀行は企業が必要な許認可書類を全て提出するまで資金を保留することが常態化していました。本通達は、取引承認(M&A Approval)の取得が必要な場合は、取得後直ちに、かつ企業が企業情報の修正登録手続を行う前であっても、投資家が投資資本口座へ資金を送金することを認めることにより、この問題点を解消しました。この規定は、現行の企業法及び投資法の手続及び趣旨に合致するものです。

ベトナムにおける再投資に関する規定

本通達は再投資の仕組みを明確化しており、外国投資家はベトナムでの投資を継続する際に、事前に利益を海外へ送金することが義務付けられなくなりました。利益及び適法な収入は、投資資本口座から決済口座へ直接振り替えて新たなプロジェクト又は投資活動に充当することが可能です。企業が事業を拡大する上でより有利になるとともに、「一度、海外へ送金してから再度ベトナムへ資金を還流する」という手続が不要となります。

本通達は、これまでの実務上の問題点を解決するだけでなく、国際資本市場の発展に即した、現代的かつ柔軟な外国為替管理制度の仕組みの基盤を構築するものです。適用範囲の拡大、対象主体の標準化、出資及び再投資における柔軟性の向上により、本通達は、ベトナムが質の高い外資を誘致し、新たな投資モデルを支援し、国際金融センターのような先進的な金融インフラの形成を促進するための前提条件を整えます。これは、透明性が高く、競争力があり、国際基準とより一層調和した投資環境の実現に向けた重要な一歩といえます。

本記事は概要をまとめたものであり、実際の適用にあたっては必ず原文の法令をご確認ください。